キョンシー映画はいくつもありますが、ここでは『幽幻道士』について語ります。いまも耳に残る美しい劇中曲も紹介します。
可愛いテンテン、耳に残る特殊霊魂のBGM、怖いけどカッコいい親方キョンシー。録画したビデオテープを夢中で何度も観返したあのころを思い出して魅力を語りたいと思います。
子供心にテンテンやチビクロ、トンボに恋したあなた。
そんな、なつかしくも淡い思い出を共有したいと思います。
☆ * : 。. 目次 .。 : * ☆
キョンシーとは
私にとってのキョンシーとは、『幽幻道士』に登場するキョンシーです。
漢字で書くと殭屍(僵屍)。
両手を前に突き出してピョンピョン飛び跳ねる、おでこにお札を貼られているとおとなしい、一見コミカルなキャラクターです。
昼間はおとなしいキョンシーですが、夜になると狂暴になり、ひとたびお札をはがせば人間の生き血を求め彷徨います。もしキョンシーに噛まれたらその人もキョンシーになってしまいます。
キョンシーに影を踏まれると呼吸ができず動けなくなります。とても縁起が悪いことだそうです。キョンシーは視力が弱いので、人間の呼吸でその位置を特定します。もしキョンシーに襲われたら呼吸を止めてじっとやり過ごさないといけません…。
小学生の私は必死で息を止める練習をしました。
キョンシー隊
キョンシーは趕屍隊(かんしたい)と呼ばれる集団で、道士に率いられてそれぞれの故郷に帰ります。
むかし中国の湘南省では、出稼ぎ先で亡くなった人は故郷で埋葬しないと家が滅びてしまうと言われました。とはいっても、遠く離れた故郷までご遺体を運ぶのは大変です。
そこである道士がご遺体を歩かせる方法を考えました。これがキョンシー隊の始まりです。
キョンシー隊は、夜間に鈴を鳴らして通行料としてお札をバラまきながら進みます。おでこのお札は道士の命令を聞かせるために必要です。道士の持っているランプの中には死者の魂が入っており、火が消えるとキョンシーたちは凶暴な吸血鬼になってしまいます。
キョンシーは中国版のゾンビ
80年代半ば、テレビのロードショーで父と一緒にゾンビ映画を見て、一生モノのトラウマを背負うほど恐怖しました。そんな私にとって噛まれると自分もキョンシーになってしまう設定は、子供向けの半分コメディとはいっても怖すぎました。
キョンシーが着地するときの「ドンッ」という太鼓の効果音にすらビクッとなります。
『幽幻道士』とは
『幽幻道士』シリーズは、1986年~1988年にかけて制作された台湾映画で原題は1~4それぞれ、、、
- 『殭屍小子』(1986年)
- 『哈羅僵屍』(1987年)
- 『幽幻道士』(1988年)
- 『孩子王』(1988年)
『幽幻道士』とは香港映画『霊幻道士』の亜流作品で、子供向けのホラーコメディです。日本では劇場公開ではなく「月曜ロードショー」で放映されて、小学生を中心に人気が爆発しました。
※1.の『殭屍小子』は、直訳すると「ベビーキョンシー」みたいな意味です。2.の『哈羅僵屍』は「こんにちは、キョンシー」。なんだかあんまり怖くないタイトルですね。
大人がブルース・リーやジャッキー・チェンに魅了されたのと同じように、キョンシーと戦う同年代の子供たちの活躍を自分たちに重ねていました。道教の衣装や霊符、法術といった世界観も日本人の好みにピッタリだったのかも知れません。
このシリーズ作品の魅力はその他にもたくさんあります。有名作品のサントラ(ジャッキー・チェンの『酔拳』などが有名)や、耳に残る名曲が作中に盛りだくさんです。また、日本の童謡『鳩』のアレンジ曲が随所に流れます。
日本でヒットした理由
これは私の勝手な想像ですが、作中で何度も流れる『鳩』のアレンジ曲から、日本統治時代に対する郷愁みたいなものを感じます。幽幻道士の世界観には、日本人にとっての原風景も含まれているのかもしれません。
童謡『鳩』のメロディにのせて(※下は日本語訳)
爸爸爸(パ パ パ)
我愛爸爸(ウォ アイ パ パ)
我是你的乖寶寶(ウォ シー ニー ディ グゥァイ バオバオ)
爸爸你喜(パ パ ニー シー)
媽媽你喜(マ マ ニー シー)
乖寶寶(グゥァイ バオバオ)
パパ、パパ
パパ大好きだよ
私はパパのよい子だよ
パパも
ママも
よい子の私が大好き
かわいすぎる!テンテンの魅力
クラスの男の子たちは超絶美少女テンテンに魅了されていて、私の好きな男の子も、テンテンがかわいいと盛り上がっていて、ふんっ!と思った記憶があります。
でも、テンテンは本当にかわいくて、そして高田由美さんの声が絶妙にマッチしていました。
アイドルすぎるテンテンの紹介
本名:劉致妤(リュウ・ツーイー)
生年月日:1978年10月10日
出身地:台湾・花蓮県
血液型:O型
吹き替え版の声優:高田由美
公式ブログ:☆Shadow Liuの天衣無縫☆
日本でもアイドルをしていたテンテン。はじめはテンテンという芸名で活動していたそうです。ご本人が日本語で話している映像を見た時は驚きました。
テンテンの現在
現在はシャドウ・リュウに改名して女優を続けています。父は俳優の劉尚謙、兄は『幽幻道士』シリーズでスイカ頭を演じた、劉至翰(リュウ・ツーハン)ことジョニー・リュウ。8つ下に母親の異なる妹がいるようです。
日本に留学経験もあり、アイドルグループ「黒BUTAオールスターズ」に在籍していたことで流暢な日本語を話します(日本語検定1級)。
『幽幻道士』の魅力的なキャスト
チビクロ(『幽幻道士』)
本名:陳子強(チェン・ツーヤン)
生年月日:1975年10月06日
出身地:台湾・屏東県
現在もチャールズ・チェンとして俳優を続けています。1997年には日本のドラマ『金田一少年の事件簿~上海魚人伝説~』に楊小龍(ヤン・シャオロン)役として出演。俳優の傍らアクションスターに武術指導なども行っているそうです。
私生活では2008年に結婚しましたが2011年に離婚。子供は二人いるようです。スマップの森且行さんに雰囲気が似ていると私は密かに思っています。子供のころから激しいアクションをこなしていたため脊柱に古傷があり身長が伸びず、公称172cmの身長は、実際は165cmだとトークショーでも認めています。
チビクロ役としては1のみで3は幽幻童子として出演。すごく雰囲気のある子役さんで大好きでした。『幽幻道士2』になってチビクロ役の変更がとても残念でした。安安(アンアン)も魅力的な子役さんですが、カンフーアクションがまったくできない部分に子供ながら物足りなさを感じていました。
チビクロ(『幽幻道士』2-4)
安安(アンアン)
現在は映像ディレクターの仕事をされているそうです。2-4に出演していますが初代チビクロ(陳子強)と異なりカンフーアクションが苦手です。そのぶんキョンシーとの戦いで逃げ回る姿がとってもキュートです。
ブルース・リーのヌンチャクを真似るシーンを見ると、アクションもこなせそうに見えるのですが…
沙親方
本名:黄仲裕(ホァン・ヂョンユィ)
生年月日:1961年02月17日
出身地:台湾・台南市俳優としてだけでなく、武術指導や監督業までこなすマルチな方です。
『幽玄道士』の魅力の一つとして、カッコいい親方を挙げたいと思います。撮影当時は25歳ということですが、あの苦み走った渋さは20代半ばには見えません。メイクや表情でまったく別人に変身してしまうので、複数の役で登場しても初見ではわかりません。
キョンシー化した親方の演技はとても怖かったです。シリーズを通じて様々な役柄で登場していますが、メイクで完全に別人に化けるので初見ではほとんどわかりません。
『幽幻道士2』で語られるベビーキョンシーの父親、『幽幻道士3』の敵役であるムササビ道士も、親方役である黄仲裕が演じています。
金おじいさん
本名:張金塗(チャン・キントー)
生年月日:1932年10月05日
出身地:台湾(日本統治時代)・台北市
2001年に肝臓がんにて逝去(70歳)。老人のメイクをしていたが、撮影当時54歳なので身のこなしはとても軽くカンフーアクションも抜群。死因となった肝臓がんも、お酒が大好きだった金おじいさんのキャラにマッチしていて切ないです。
芸名の金・塗は本名からだそうです。
当時の金おじいさんは、実はお年寄りではなかったことに驚きました。あれだけ飛んだり跳ねたりするので当然といえば当然です。スタントさんのシーンも多いとは思いますが、今見返してみるとお顔はとても若いです。
デブ署長(兄・弟)
本名:胖三(パン・サン)
生年月日:1953年02月14日
2006年に逝去(52歳)。シャドウ・リュウのブログによると、仕事に対してとても厳しい方である半面、面倒見がよく義理の父のような存在であったという。※台湾では親しみのある目上の人物を義理の父・母と呼ぶ
尚、『幽幻道士』と『幽幻道士2』のデブ署長は同一人物ではなく、(1)兄と(2)弟という設定。(1)兄は親方キョンシーに殺されたと、2で弟が発言しています。
スイカ頭
本名:劉至翰(リュウ・ツーハン)
生年月日:1975年02月04日
出身地:台湾・花蓮県
ジョニー・リュウとして俳優を続けていましたが、2008年に芸能人の権利保護に関する記者会見を開いたためテレビ業界から締め出されてしまいました。近年では映画業界に活躍の場を移しています。
私生活では2008年に台湾女優の林子瑄と結婚、翌年子供が生まれましたが2011年に離婚。2014年には再婚しています。『幽幻道士』シリーズでは、ふっくらした三枚目キャラでしたが現在は二枚目になり当時の面影はありません。
トンボ
本名:鄭同村(ツェン・トンチュン)
現在は武術指導やダンス教室の講師をしているそうです。幽幻道士シリーズには3-4にのみ出演しています。
一切説明なしで突然3から現れたので子供ながら??となってしまいました。が、カンフーアクションに長けて、しかもイケメンだったのですぐに虜に。チビクロと女子の人気を二分する存在でした。
デッパ
黄國書(ホァン・グオシュー)…1に出演
徐明達(シュー・ミンダー)…2に出演
チビトラ
張台生(チャン・タイスン)…1-2に出演
ベビーキョンシー
洪竟原(ホン・イーユェン)
道士(長三道士)
本名:林光榮(リン・グァンロン)
死んだ人間様のお通りだ!人間どもは道をあけろ!邪魔する者は道連れにする
ぞ!のセリフでおなじみです。
盛天文(せいてんもん)
本名:顧冠忠(クー・クヮンツォン)
生年月日:1955年2月22日
出身地:中国・上海市
元々は香港の映画俳優でしたが1993年に台湾の身分証を作り、台湾で兵役を務めた初の香港スターになりました。幽幻道士3では盛天文さんがかっこいい!と思っていました。
シシ丸
褚修身(ツー・シューシェン)
マーボおばさん
尤美芳(ヨウ・メイファン)
モミジ
狄嘉(リー・ジャ)
「私はカエデ、モミジじゃないわ」
幽幻道士と霊幻道士の違い
キョンシーといえば『幽幻道士』シリーズと『霊幻道士』シリーズが有名です。
私は『霊幻道士』もすべて見たはずなのですが、ほとんど印象に残っていません。 もう一度観直そうと思います。
耳に残る!特殊霊魂(特別霊魂)とは
劇中ではあの世とこの世のどちらにも属さない存在として扱われています。テレビ朝日放映の吹き替え版では特別霊魂(とくべつれいこん)と呼ばれていたので、録画を繰り返し観ていた私にはその呼び名がしっくりきます。
チビクロたちを親方の霊魂に会わせるため、テンテンが金おじいさんに内緒でカンルーインの術と呼ばれる法術を使うシーンが、耳に残るBGMと相まって印象に残っています。
耳に残る特殊霊魂のBGM
『幽幻道士』の劇中曲はとても個性的で耳に残ります。
その独特なサウンドが、ギリシアの音楽家Vangelisさんの名盤『Heaven and Hell』とフランスの音楽家JEAN-MICHEL JARREさんの『OXYGENE』に収録されています。
特に特殊霊魂のシーンで流れるBGMが強く印象に残っています。白塗りの風貌と独特の衣装、そして音楽。まさに黄泉の国へ赴くにふさわしい怪しさで、ゾクゾクしながらも興奮したのを覚えています。劇中に流れる音楽は、子供心に中国っぽいなあと思って聞いていたので意外にも欧州風味全開で驚きました。
2021年で34周年!『幽幻道士』のまとめ
キョンシーネタはピンポイントの同年代以外にはわかりにくいかも知れません。かなり限られた年齢(学年)の中で爆発的なブームとなっていました。なつかしいキョンシーを思い出して、テンテンやチビクロ、トンボのことを調べ直して楽しく記事が書けました。
(※当時の思い出+中文のwikipediaから情報収集して補足しました)
夏休みの特番だったと思いますが、当時子供たちの間でブームになっていた『幽幻道士』のキャストが来日してテレビ出演しました。その時に金おじいさん役の金・塗(キン・トー)が流暢な日本語で話し始めたのです。なんでだろうと不思議に思い、昔は台湾が日本の一部だった話を父にしてもらったことを覚えています。この話は子供心に不思議というか、とても驚きました。
金おじいさんとマーボおばあちゃま、この二人の法術演出やアクションシーンも『幽幻道士』シリーズの見所の一つでした。人気が爆発した理由は、テンテンやチビクロといった子供たちが魅力的だったことはもちろんですが、カンフーアクションも大きいと思います。
大人がブルース・リーやジャッキー・チェンに魅了されたのと同じように、キョンシーと戦う同年代の子供たちの活躍を自分たちに重ねていました。道教の衣装や霊符、法術といった世界観も日本人の好みにピッタリだったのかも知れません。
お読みいただきありがとうございます。
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